Saturday, December 02, 2017

ヘイト・クライム禁止法(138)トルコ

トルコ政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/TUR/4-6. 17 April 2014)によると、刑法第216条は次のように定める。
(a)公共の秩序に明白かつ切迫した危険となる方法で、社会階級、人種、宗教、宗派又は地域差に基づいて、他の個人に対して敵意又は憎悪を増殖することを住民の集団に公然と煽動した者は、1年以上3年以下の刑事施設収容とする。
(b)社会階級、人種、宗教、宗派又は宗教の差異に基づいて、住民の一部を公然と侮辱した者は、1年以上3年以下の刑事施設収容とする。
(c)住民の一部の宗教的価値を公然と侮辱した者は、その行為が公共の平穏を歪めた場合、6月以上1年以下の刑事施設収容とする。
 刑法218条は、216条の犯罪がメディアやプレスを通じて行われた場合、刑罰を半分加重している。
 刑法216条は、明白かつ切迫した危険となる方法で、社会、人種、宗教又は地域の敵意又は憎悪の煽動を予防するために表現の自由を制約している。これは表現の自由の高度の基準と憎悪煽動問題の間のバランスをとるためである。自由な環境で思考を表明することは民主社会の必要条件である。犯罪の定義はこのアプローチに従ってなされる。行為が刑法216条の射程に収まるために、具体的に公共の安全が危険にさらされる方法で行われなければならない。
 2011年のラジオ・テレビ局設置法第8条(b)は、人種、言語、宗教、性別、階級、宗教及び宗派に基づいて差別することによる憎悪及び敵意を社会に煽動するメディア・サービスを禁止している。
 人種差別撤廃委員会はトルコ政府に次のように勧告した(CERD/C/TUR/CO/4-6. 11 January 2016)。刑法216条は人種的憎悪の煽動の訴追条件に「公共の秩序に明白かつ切迫した危険」を定めていることに関心を有する。刑法が人種的動機を刑罰加重事由としていないことは遺憾である。刑法216条が表現の自由を制約し、ジャーナリスト、人権活動家、マイノリティの権利擁護者を処罰するのに利用されてきたことに関心を有する。委員会は刑法第216条を条約第4条に合致するように修正することを勧告する。一般刑法に刑罰加重事由として人種的動機を定めるよう勧告する。委員会は、集団の権利を人種主義的ヘイト・スピーチから保護する必要の重要性を想起し、適切な措置を講じるよう勧告する。そのために、公的議論において政治家等による人種主義的ヘイト・スピーチや差別発言を非難すること。ヘイト・スピーチとヘイト・クライムを記録し、刑法のもとで実効的に捜査し、処罰すること、ヘイト・スピーチとヘイト・クライムの事件に関する統計を収集すること。人種的憎悪を助長する団体に関する条約4条の規定に従って、効果的な立法を行うこと。