Friday, August 11, 2017

平和の憲法政策論に学ぶ(5)

水島朝穂『平和の憲法政策論』(日本評論社)
V   ドイツ軍事・緊急事態法制の展開
V部はドイツの状況を紹介しながら日本の歩むべき道を探る。
「第19章 緊急事態法ドイツモデルの再検討」では、緊急事態法のモデルの一つとされるドイツ法について、歴史的経過から日本とどのように違うかを明確にし、緊急権濫用を防ぐ安全装置あることを指摘する。両国の憲法の基本的な性格の違いを踏まえた議論が必要である。
「第20章 ドイツにおける軍人の「参加権」──「代表委員」制度を中心に」では、ヴァイマル時代以来、国防軍の中に「代表委員」が置かれたことに始まり、戦後のドイツ連邦におけるその継承、発展をフォローし、軍隊における「軍人参加」の意義を考える。かなり限られた機能しか持たない点では積極的に評価できるわけではないとしつつ、軍隊社会に市民社会の風を吹き込む試みとして重要だと言う。
「第20章補論 「軍人デモ」と軍人法」では、1999年にドイツで初めて行われた制服軍人のデモを素材に、軍人と政治、軍人の基本的人権について考える。
「第21章 軍隊とジェンダー──女性の戦闘職種制限を素材として」では、女性の徴兵制のあるイスラエル以外は、圧倒的に男性が形成してきた軍隊に、女性進出がはじまった。アメリカでは女性が戦闘機に登場し実際に戦闘を行ったことがフェミニズムの勝利と喧伝された。ドイツ基本法は女性の戦闘職種を禁止しているが、その解釈・運用を紹介し、「フェミニズムの勝利か、平和主義の敗北か」を検討する。
「第22章 「新しい戦争」と国家──U・K・プロイスのポスト「911」言説を軸に」では、批判的憲法理論の代表であるプロイスが軍事介入を肯定するようになった癲癇の論理を検討する。
「第23章 戦争の違法性と軍人の良心の自由」では、軍人によるイラク戦争協力拒否事件の裁判を追跡し、批判的不服従の可能性を検討する。兵役拒否(市民的不服従)と軍隊内における役務拒否の関係が問い直される。
「第24章 日独における「普通の国」への道──19947月と20147月」デハ、ドイツのNATO域外派兵と日本の集団的自衛権論を対比して、現代の国防と平和について考える。
ふだんは忙しさのあまり、本格的な研究書をあまり読めなくなってきた。今回はジュネーヴに3冊の研究書を持ってきて、まず水島の著作を読んだが、本来ならいつもこうした研究書を読んでいたいものだ。旅先ではお手軽な新書や文庫が便利だが、やはりじっくり読むべき本に取りかかる方が楽しい。
今年は『きみはサンダーバードを知っているか』出版25周年だという。この間、自衛隊が一方で現代化、海外派兵化を遂げつつも、同時に災害救助にも力を入れてきた。後者の比重をこそ充実して、実質的に非軍隊化する課題は今も同じである。災害救助もしていることを口実に軍隊化を進めるのではなく、真の(国際)災害救助組織に転換した方が社会のためになる。